ワガママSDGS中高生がSDGsを考える。実践する。

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2023.04.30

ワガママを実現するために何が必要かを考えることが、実は社会課題を解決することになりえる。

株式会社政策渉外ドゥタンク・クロスボーダー 代表取締役 小木曽稔氏

2022年度審査員からのコメント

WAGAMAMA SDGs KOBE

会議風景

2022年度の審査員でもあり、政策提言のプロとして中高生の市長への提言作りもサポートしてきた、小木曽稔氏(株式会社政策渉外ドゥタンク・クロスボーダー 代表取締役)に提言およびプログラム全体へのコメントをいただきました。

まさに実社会で行われているプロジェクトマネジメントそのもの。

提言を作成するにあたり、中高生たちの試行錯誤は自己成長を生み出し、提案の質を高めてきた。世の中でよく言われていることをなぞるのではなく、本当に自分が腑に落ちたものになっているのかということが何度も議論され、最終的な提案内容にたどりつくには、行きつ戻りつがあった。実際行ってきた議論や実施した実証実験などを全体として振り返る中で、自分たちが取り上げていくべき真の課題と解決方法は何かを特定していく作業がなされたのである。

この方法論は、まさに実社会で行われているプロジェクトマネジメントそのものであり、仮説を立てて実証し、またその仮説を見直すということであり、中高生たちは社会に出る前から実践したということである。このような経験の積み重ねこそが『ソーシャルアントレプレナーシップ』を涵養するために必要不可欠なものと考える。

このプロジェクト自体が、生きる力になる。

ワガママに政策のヒントがある(ワガママは不満でありニーズでもある)と考えている。ワガママというのは、実は、現状と理想の差分を気づかせる目印ではないだろうか。この活動を通じて、自分のワガママを実現するために何が必要かを考えることが、実は社会課題を解決することになりえる。さらにこのプロジェクトは、仲間や地域の大人たちと協働が基本のため、独りよがりにもならない。他の人と議論することで新たな視点に気づかされ、自分のワガママをより進化させることができるのである。

行政側にとっては、このプロジェクトは、課題の発見や解決方法のヒントを得る新たなツールになりえると考える。行政側が現状において、意見・情報を吸い上げる場所や情報源には偏りがないとは言い切れない。昔から、どのように市民社会を巻き込んで行政をしていくかということは行政過程論で議論されてきたが、現実には社会を巻き込みきれておらず多様な声を吸い上げることに限界がある状態が続いている。ワガママSDGsは学生という10代の一市民である彼らの声が反映されているとともに、行政がリーチしえない層、行政が気づかない視点が示される可能性が十分にあるのだ。これからの政策は、官民共創型といわれるが、ワガママSDGsの参加者は、新たな政策をつくり、それを広めて行くための予備軍・推進者・実践者になりえる。

試行錯誤しながらも自分たちのワガママを形にしようと実践し、それをもとに市長へ提言するべく動画を撮影した際に見た、中高生たちのすがすがしい顔が印象的であった。このプロジェクト自体が、生きる力になるのだと実感した。

小木曽稔氏
【小木曽稔氏プロフィール】

1994年に東京大学法学部を卒業後、運輸省(現・国土交通省)に入省。2006年楽天株式会社に入社、渉外室ヴァイスジェネラルマネージャーとして活躍する傍ら、2012年6月より新経済連盟の事務局も兼務。新経済連盟(JANE)政策部長として、広範な領域で各種の政策提言活動をリード。2022年1月から独立し、株式会社政策渉外ドゥタンク・クロスボーダーを設立するとともに、マカイラ株式会社に参画し、マカイラ公共政策研究所所長に就任。一般社団法人新経済連盟渉外アドバイザー、東京都デジタルサービスフェロー。

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