2022
07.26

ひとりではたどり着けない場所をめざす「創発」レッスンことはじめ。ー交流会レポートー

レポート

自由になるのは、むずかしい。ちょっぴり戸惑いながらのスタート

わがままSDG’s神戸の第2期開講から1ヶ月経った6月25日、初めてのリアル交流会が開催されました。会場はデザイン・クリエイティブセンター神戸KIITO。集まった17人の2期生たちは、これから何が始まろうとしているのか、緊張気味の面持ちで待ち構えています。この日のゴールは「お互いを知って仲良くなること」、そして「取り組みたいプロジェクトと、そのチームを仮につくってみること」。さて、どんな3時間になるんだろう?

まず第1パートは、「やりたいこと」を掘り下げるチーム内ブレストや個人ワーク。これまでの座学でアウトプットしてきた「違和感」「わがまま」を起点に、「じゃあ明日を変えるために、自分なら何をする?」という思考を掘り下げていきます。とはいえ、ただの真っ白な紙を前にして、思考を自由に解放するのって、案外むずかしい。そもそも、中高生が「何をやってもいい・何を考えてもいいんだよ」って言われる状況なんて、これまであまりなかっただろうし。この時点では、まだうまく殻を破れない戸惑いやもどかしさが、2期生の表情に浮かんでいるように見えました。

関係をつくり、流動性の中で自分の役割を見つけてゆく

第2パートは、いったん掘り下げた思考を脇に置いて、コミュニケーションゲームで関係を深めていきます。円陣を組み、アイコンタクトを取りながら見えないボールをパスしあったり、グループに別れ、あるお題にしたがって一人ひとつずつ順番に言葉をつなぎながら、みんなでひとつのお話を紡いだり。湧き上がる笑い声とともに、みんなの表情が明るくなっていきます。

最後のゲームは、チームに与えられたひとつのお題を、全員でからだを使って表現すること。たとえば8人なら8人で「すべり台」の造形を、お互い言葉による指示は一切なしに、できるだけスピーディに協力し合いながら再現します。いわゆるインプロヴィゼーション(即興)ですが、こういうものはやっぱり若いほど順応力も瞬発力も高い!と実感。場の空気が初めの頃とは明らかに変化して、一体感が生まれているのがありありとわかります。この感覚は、やはりオンライン交流会では得られないもの。

このパートの締めくくりとして、2期生たちは「チーム内で自分がどうふるまったか」を振り返ったうえで、自分の強みをキャッチフレーズで表現することに。人と関係をつくり、流動的に変化していく状況下で、その時その時、自分にできる役割を見つけていく。その感覚を研ぎ澄ますことは、「創発」への第一歩です。

内から殻を破る力と、外からの「突っつき」が出会う時

そしていよいよ交流会最後のパート。17人全員が車座になって、改めて自分の「やりたい」を言語化します。コミュニケーションゲームを経て温まった空気の中、誰しもがのびのびと発話し、それに呼応するように笑い声やツッコミなどのリアクションがポンポン飛び出していく活気が、なんだかまぶしい!

みんなのプレゼンが終わると、次に待っているのは「やりたい」が似通っているメンバーと、仮のチームをつくってみるという作業。これは、この日最大の難関だったかもしれません。誰かが割り振ってくれるのに任せるのと違い、自分たちで話し合って「やりたい」をすり合わせながら自発的にチームをつくっていく。「大人でもむずかしいよな……」と思いながら見守りますが、いやいやどうして。自分のことと全体のことを考えながら、言葉のキャッチボールを試みる動きが、あちこちで起きているではありませんか!

もちろん、自分の思考を「メタ認知」して「抽象化」するスキルはまだ発展途上の中高生ですから、そばで見守る大人のちょっとした助け舟が必要な場面は多々あります。そうか、これがまさに「啐啄同時(そったくどうじ)」。生まれ出ようとしている雛が、内から卵の殻を破ろうとしているその時に、外からも親鳥が突っついてあげることが大事なんだ。

畑の区画を与えてもらうのではなく、畑を探しに行くところから

こうしたプロセスを経て生まれたのは、以下のようなテーマを持つ4つの仮グループ。

1)「チーム・SPACE」

  誰かの助けになる自由な場をつくる。

2)「チーム・PRODUCERS」

  既成概念に縛られず好きなヒト・コトを発信できるプロデューサーになる。

3)「チーム・反スクール法」

  学校の先生やルールに対して、ちゃんと異議を唱える。

4)「チーム・日本なぐりこみ隊」

  文科省に話をつけて学校の仕組み(拘束時間・カリキュラムetc)を変える。

いずれも短時間でアウトプットした内容だから漠然としているし生煮えだけれど、彼・彼女たちの内側から湧き上がってきたものであることは間違いありません。この仮チーム決めが、これから始まるプロトタイピングの予行演習なのです。

農作物にたとえて言うなら、囲いのある整備された畑を与えてもらい、いくつか用意された苗の中から選んで育てるのであれば、手っ取り早くて成果もわかりやすいでしょう。でも、この「わがままSDG’s」が目指すのはそこじゃない。つまり、畑になる土地を仲間と探しに行き、自力で土を掘るところから、なのです。何を植えてどう育てるかは、2期生次第。間違うかもしれない。失敗するかもしれない。でもその経験もすべて、この先を生きていく嗅覚を磨くことにつながる、そう思います。

「早く行きたいなら、ひとりで行け。遠くまで行きたいなら、みんなで行け」。この日のみんなの気づきは、この言葉に集約されるかもしれません。アフリカに伝わることわざだというこのフレーズは、コミュニケーションゲームのファシリテーションを担当した中谷和代さん(演出家・劇作家)から中高生への「贈る言葉」。「対話」と「創発」を通して、ひとりではたどり着けない場所へ。これからみんながどんな畑を切り拓いていくのか、楽しみです。

(ワガママSDGs 事務局 ・松本)