2022
10.27

迷い、触発、方向転換、再出発。ディスカッションを重ねたプロジェクトの行き先。

ショートレポート, レポート

自分たちの思いを世に問うてみる、初めてのトライ。

(前篇からの続き)

合宿2日目は、お昼までに各チームの「企画書2.0」を完成させ、午後のプレゼンタイムを迎えます。どのチームも昨晩は遅くまで企画を練っていたようですが、それでも朝から早起きして遊んできた、Bチームのようなツワモノも。眠気を吹き飛ばして集中しようと、スキップしたり伸びをしたりとにぎやかです。

中高生のプレゼンを受け止めるのは、審査員長の吉田幸司さんを筆頭に、黒田浄治さん(六甲バター株式会社)、神谷圭市さん(日本財団)、福井 誠さん(武庫川女子大学)、 小木曽稔さん(株式会社政策渉外ドゥタンク・クロスボーダー)という顔ぶれ。いずれも、ビジネスや教育、政策提言などの現場で、日々社会課題解決に取り組んでいる方々ばかりです。

Aチーム「Chanced」から順に壇上に立ってマイクを握り、プレゼンを始めますが、トップバッターの緊張か、〈しょーちゃん〉の声もちょっと震えがち。それでも自分たちで議論を重ねて練り上げてきた内容を伝えようとする姿勢は、どのチームも堂々としたものです。

プレゼン後には審査員から鋭いツッコミも入りますが、言われっぱなしではなく、自分たちの意見を別の言い方で伝え直そうとしたり、審査員に逆質問をしたりという場面も多々。中高生たち、なかなか頼もしい!居並ぶ審査員たちの表情も、一層熱を帯びてくるのがわかります。

前日からここまで進化した!みんなのプレゼン。

ここからは、各チームのプレゼン内容を簡単にご紹介!

まずAチーム「Chanced」は、福祉作業所で障がいを持つ人たちが作るプロダクトに、中高生に触れてもらう機会を「ポップアップショップ」という形で企画。このチーム4人、神戸・京都・広島・名古屋とバラバラなところに住んでいる点を活かし、ポップアップショップを4か所でやることをmaxの目標としているのです。「福祉について、将来大人になってから考えればいい、じゃなくて今の自分たちにできることはなんだろうって考えたい」「同情じゃなくて、“世界の広がり”として中高生にも捉えてほしい」という言葉が力強く響きます。

Bチーム「Shining Rainbow」は、社会にアライ(Ally=LGBTQを支援するストレート)を増やすことがテーマ。それぞれに抱えている課題の原点を説明する際に、当日朝に帰宅しなければならなかった〈かりちゃん〉の声も録音して会場に流すなど、素敵なチームワークを見せました。プレゼンでは、まず自分たちが考えた「アライの定義・5か条」を発表。それをドラマ・広告・ウェブサイトを通して発信することと、さらに当事者とアライの連帯を示す商品を販売すること、その2軸をプロジェクトの柱としました。

Cチーム「反スクール法」は、みんなで学校の理不尽なルールについて討論するイベントを開きたい、とプレゼン。その最大のポイントは、先生や教育委員会の人も招き、みんな「ニセ制服」をまとって「同じ立場で討論すること」。最初は「ニセ制服を作ること」「みんなで楽しめるイベントを開催すること」が目的化していたのが、この2日間で、イベントはあくまでゴールを達成するための手段なんだ、という意識の転換に成功したようです。

Dチーム「learning革命」は、なんとお芝居仕立ての演出から始まるプレゼンを敢行!あれからいつの間に練習したのか、「思いを届けたい!」という気持ちが伝わってきます。ここで提案した取り組みは、偏差値では測れない個の才能を引き出す探求型学習を広めるために、①先生たちや文科省の現状を知る情報収集をする ②ウェブ広告やチラシを作って小中高生と先生に探求型学習の大切さを伝える ③中高生が先生たちに「自分たちの望む探求型学習」の講習を行う、という3本柱です。

Eチーム「KAERU」は、対象を不登校の子どもたちに絞り、彼・彼女たちが学校・家でやりたくてもできなかったことを詰め込んだ修学旅行のような2泊3日を実現したい、とプレゼン。2泊3日の活動内容も、子どもたちが主体になり、オンラインで話しあって決める、というもので、不登校という同じ悩みを抱えた仲間と出会える場所を作りたいという思いがそこに込められています。

中には資金計画までしっかり作り込んだチームも。荒削りな仮案ではあっても「企画書2.0」のフレームワークに沿って、企画立案の実地トレーニングがぐんと進んだことがわかります。

芝居仕立てのプレゼンも。

審査員たちとのセッションで、昨日まではなかった一つ上の「視座」へ。

上記のような中高生のプレゼンに対して、審査員からも丁寧かつ率直なフィードバックが。

「手段と目的が逆転してない?」
「ものを売ることがゴールでいいの?」
「プロジェクトにしなくちゃと焦りすぎて、”そもそも”の部分を見失ってない?」
「認知をどう広げて、それをどう興味・関心につなげるか、もうちょっと考えてみたら?」
「イベントが終わっても波及効果が残るようにするためにはどうすればいいと思う?」
「ニュースで見聞きする、編集された情報だけを鵜呑みにしていない?」
などなど鋭い指摘が飛び交いますが、審査委員やコーディネーターたちが中高生に注ぐ眼差しはあたたか。
「正直言って自分が10代の頃は、こんなこと考えもしてなかったからね」という本音も飛び出します。

この時間がみんなに与えてくれた気づきは、プロジェクトを立ち上げ、多くの人を巻き込む上で欠かせない「ロジックの構築力」の大切さ。そしてそれは、しっかりしたリサーチと「相手の立場からも考えてみる」という複眼的思考がなくては成り立ちません。独りよがりになったり、違う立場の人々といたずらに対立構造に陥ることなく、対話と共感のためのロジックをどう作るか。それがまさにこれからの後半戦で問われています。

象徴的だったのは、Dチーム「learning革命」への、福井先生からのフィードバック。 「生徒から教師に対して教育法の講習を行うというのは、メソッドを持たない中高生には無理があるよね。でも教科書についている指導要綱、あれを生徒と教師で対話しながら作るという手もあるんじゃない?」という先生の言葉に、メンバーの顔がぱっと明るくなるのを感じました。

「あまりにも課題がデカすぎて、全部自分たちでやるには無理を感じていたけれど、先生と対話しながらケースブックを作るというのならできそうな気がしてきました!ありがとうございます!(はかま)」

審査会が終わった後も、会場のあちこちで「審査員に直接質問したい!話したい!」と、自ら駆け寄っていくメンバーたちの姿がありました。
審査員の反応にへこんでいたBチームの〈さくら〉は、審査員の吉田さんをつかまえて「数値目標を立てることも大事だと思ってるんですが、ゴールの指標が売り上げだと弱いですか?」とディスカッションを展開。Dチームは「文部科学省ともつながりがある」と発言されていた小木曽さんのもとに名刺交換へ!人数が一番多いチームですが、この合宿を通して一気に一体感が生まれた気がします。

このような姿からは、審査員からの厳しいフィードバックを受け止め、そこから自分たちの企画を形にするべく「這いあがろう」とする強い意思を感じました。
さまざまな対話から、これまでとは違う「視座」に気づき思考を深めた中高生たち。今の彼・彼女たちなら、小さな個の「わがまま」だったものから、明日の社会を変えるプロジェクトのタネを生み出してくれるかもしれない。そんな期待が高まった2日間でした。

(ワガママSDGs 事務局 ・松本)