2022
10.27

「お金もノウハウもない高校生ができることって何なんだろう」。リサーチして見えた現実と向き合う1日。

ショートレポート, レポート

リサーチを始めて直面した問い・悩み・迷い。

ついにこの時が来ました。普段はオンラインで会うことが多い中高生たちのリアルで集まる合宿。

夏休み真っ只中の8月19日、2期生たちが集ったのは、「神戸しあわせの村」。7月以降、仮チームに分かれ、オンラインの画面越しに議論を重ねてきたローンチプランを、ここで2日間かけて審査員にプレゼンできるところまで練り上げていきます。

8月に入ってから各チームは、自分たちの「ビジョン」と「ゴール」を検証するためのリサーチに着手したところ。どのチームも、これまで接点のなかった外の世界の人々にヒアリングをすることで、「自分たちのターゲット設定・ゴール設定って正しかったのかな?」という疑問が生まれている様子です。まさに「三歩進んで二歩下がる」かのように見える生みの苦しみのフェーズかもしれません。

まず手始めに「人間知恵の輪ゲーム」で体と心をほぐしたら、革命家・湯川カナより、これから仕上げるべき「企画書2.0」についての説明を受け、いよいよチーム内ディスカッションスタート!

会場の庭でまずは「人間知恵の輪ゲーム」

障がいによる困りごとを抱えた人に、中高生ができることって?

Aチーム「Chanced」は、障がいによる困りごとを抱える人々と、中高生がつながれるコミュニティをどう作るかについて模索中。実際に支援団体に話を聞いてみたところ、どこも共通して抱えていた課題は「広報と資金」だったとか。

「どの団体も大きくて複雑な問題を抱えてる中で、お金もノウハウもない高校生ができることって何なんだろうって…」と煮詰まった表情の〈やぎ〉。チーム内でリアル参加できたのが彼女ひとりだったため、初めは少し心細そうでしたが、1期生の〈ゆう〉がテーブルに加わって、体験も交えてアドバイスをしてくれたことで、前に進むイメージが湧いてきた様子。

さらに「そういった団体さんが、今まで高校生に働きかけができてなかった部分を考えてみたらどう?」というコーディネーターの一言で、少し思考が広がり始めたようです。

LGBTQ当事者の話を聞くうちに、とるべき道が変わってきた?

Bチーム「Shining Rainbow」のテーマは、LGBTQへの理解を深め、違いを認め合える社会を作ること。すでに当事者へのインタビューを3件行ったほか、同世代を中心とする身の回りの人々約140名に意識調査アンケートも実施したそう。

「LGBTQ当事者の支援をしたいと思っていたけど、むしろ“アライ(Ally=LGBTQを支援する非当事者)”を増やそうっていうアプローチの方がいいのかも…」と話すのは〈ゆら〉。

始まりは個人の「わがまま」だったとしても、それが多くの人を巻き込むことができれば、

それは「わがまま」を超えて「ムーブメント」になる。そんな発想の転換が起き始めています。

生徒がつくるお祭りに先生も巻き込んじゃう?

Cチーム「反スクール法」のゴールは、「みんなが楽しくのびのびできる社会」。チーム内の仮想敵は、「制服」に代表される理不尽な学校のルールのようです。

そこで出てきたのが、アンチテーゼとしての「ニセ制服」を生徒主体で作り、それをみんなで着て文化祭のようなイベントをやろうよ!というアイデア。けれど、どこかまだ掴みどころがなく、メンバーたちもどう前に進んだらいいのか戸惑っている様子。

そんな中、「大人たちが一方的に決めたルールを押し付けられていることに反発がある……それって大人がただ習慣を変えたくないだけじゃないの?って」と、〈もね〉が一言。その言葉を受けて、「じゃあいっそ先生も呼ぶ?」と、会話が盛り上がり始めます。面白い展開ですが、さてどこに向かって転がっていくんだろう?

大人たちだって教育に悩んでる?という気づきから再出発。

次は、「ちょっと日本殴り込み隊」という名称を「learning革命」に改めることにしたDチーム。メンバーにとって大きかったのは、神戸で自立・探究型の学びの場を運営するラーンネットの炭谷俊樹さんにヒアリングした経験のよう。

「文科省も、先生たちも、探求型の授業を取り入れようと迷いながら悩みながらやっていることがわかった」と話すのは〈ゆうき〉。問題は、それが何かのボトルネックで現場にうまく落とし込まれていないこと。

小中高生に呼びかけて、教育現場を変える署名運動やっちゃう?と考えていたメンバーでしたが、もしかしたら、自分たちが働きかけるべきは生徒じゃなく、教師側なんじゃない?という気づきから、再出発を図ります。

中高生の心のよりどころを作りたい・・でもどこから手をつければ?

そしてこれまでチーム名が決まっていなかったEチームは、ついに「KAERU」という名称に決定。家庭環境に悩む中高生の心のよりどころを作り、不登校や自殺者を減らしたい、というぼんやりした目標はあるものの、まだ具体的な企画アイデアを決められないままこの日を迎えました。

「私はなんとなくこのチームに入ったんですけど、メンバーに触発されて自分自身の課題意識もはっきりしてきました」と話すのは〈まいまい〉。不登校の子に対する取り組みに絞って考えてみたら?というコーディネーターのアドバイスで、少しずつ前に進み始めます。

夜の部は、資金調達と経費の使い方の話も。

夕食後を挟んで始まった夜の部では、NPOの資金調達に携わるコーディネーターによる、「お金」の話を。そして実際に、第1期の収支報告書のサンプルを見ながら、自分たちのプロジェクトの何に・いくらお金がかかるかを考える「見積もり」作業にトライします。おそらく全員にとって初めてであろう作業ですが、これも大事な学びです。

夜の部の最後を締めくくるのは、メンバー各自の名前が入った名刺の授与式。照れくさいような、誇らしいような表情で初めての名刺を手にした中高生たち。あちこちで名刺交換会が始まって、弾けるような笑い声が飛び交います。

1日目の挨拶を終えたあと、みんなが異口同音に口にしたのは「リアルで話せて一気に話が進んだ!本当によかった!」ということ。学校の勉強とはひと味もふた味も違う感覚を味わった2期生たちですが、その表情はみんな生き生きとしています。 翌日は、いよいよ審査員にプレゼンです。(後編に続く)

(ワガママSDGs 事務局 ・松本)